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古典芸能研究センターは、行吉学園発祥の地である三宮キャンパス(神戸市中央区)にあります。
能楽資料の橘文庫、民俗芸能資料の喜多文庫をはじめ、古典芸能や民俗芸能に関する書籍・資料を幅広く備えた研究施設です。芸能に関連する様々な分野の資料を収集しており、個別の分野はもちろん、より総合的な調査・研究の拠点となっています。
なお、所蔵する資料は、学生・社会人を問わずどなたにもご利用いただけます。

最新情報

最終更新日:2025年8月5日

今月の資料 (2025年8月)

古典芸能研究センター所蔵の様々な資料の中から、毎月1点紹介します。
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復元扇面画 「旭日老松に立浪と群飛鷺図」



中啓(ちゅうけい)・修羅扇
復元扇面画「旭日老松に立浪と群飛鷺図」
(きょくじつおいまつにたつなみとぐんぴろず)
菊井 伯幸氏制作

 江戸時代の下絵をもとに復元した能の修羅扇の扇面画。修羅扇は一般的に、老松を背景に日の出を大きく描いた勝修羅扇(かちしゅらおうぎ)と、波に日の入りを大きく描いた負修羅扇(まけしゅらおうぎ)の2種類に分かれるが、復元扇面画には日輪に老松と立浪が描かれ、さらに飛翔する鷺の群れもあしらわれており、勝修羅扇と負修羅扇の両方の絵柄の特徴を持つ珍しい構図の扇面画となっている。この復元扇面画の元となった下絵を所蔵する塚本家は、江戸後期から近代にかけて京都で扇商を営んでいた家系であり、所蔵される扇関係の資料の中には、江戸時代から明治頃まで能楽扇などを商っていた別の扇商・三宅家旧蔵で、塚本家に移譲されたと伝わる約640点の扇面画の下絵群も含まれる。今回紹介する扇面画は、そのうちの1図を復元したものである。
 ところで、復元扇面画の元となった塚本家所蔵の下絵には、本紙の右端に「修羅 金剛流」と書入れがあり、シテ方金剛流で使用する修羅扇の図案だったことがわかる。実は、この復元に用いた下絵と類似した構図を持つ別の下絵も塚本家には所蔵されており、5羽の鷺のポーズも、ほぼ同じである。大きく違うのは、類似する下絵には橋が付け加えられており、復元した下絵よりも派手で豪華な図案となっている点である。同種の構図の各部位を変化させることで、似通いながらも少し異なるデザインの修羅扇を制作したのであろう。ただし、さすがに盛りすぎと考えたようで、類似の下絵には、日輪の左側を飛ぶ3羽の鷺を1羽に減らすよう下絵に注記されている。また、この類似の下絵の左下端には「野村八郎兵衛御好也」の書き入れも見られる。野村八郎兵衛は、江戸時代に京都で活動した金剛流の役者であり、野村家は禁裏御用をつとめた京都を代表する金剛流の家柄である。扇面画の元となった下絵にも「金剛流」と記されていることから、これら2点の下絵は、江戸時代の金剛流で用いられた修羅扇の図案を描いたものと分かる。江戸時代の金剛流の修羅扇のアレンジの様子がうかがえる貴重な資料と言えよう。

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