ブックタイトル神戸女子大学家政学部紀要 第50巻

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神戸女子大学家政学部紀要 第50巻

- 54 -家計は家庭の経済活動を貨幣でとらえたものであるが、労働力の提供により所得を獲得し、消費や貯蓄を行うフロー面と、資産形成というストックの両面をもつ。個々の家計は小さな存在であるが、消費額の総額である家計最終消費支出は国全体の経済活動(国内総生産GDP)の約6割を占めており、家計の行動が経済社会全体に与える影響は非常に大きい。本報告は、長期的な家計構造の分析から、暮らしの変化について概観したものである。総務省統計局「家計調査」によると、二人以上の世帯のうち勤労者世帯の実質可処分所得(消費者総合物価指数でデフレート)は1997年まで増加傾向にあったが、1998年以降は減少している。それに伴い、実質消費支出も減少に転じた。実質可処分所得の減少により平均消費性向は上昇したが、かつてと同じ所得水準になっても、平均消費性向はその当時よりも低くなっておりラチェット効果(過去の最高所得が消費の落ち込みを歯止めする効果)と反対の傾向を示した。超高齢社会を向かえ、長引く景気低迷の中、雇用環境も悪化し、家計は倹約し将来の蓄えに努めているものと思われる。また、実収入に占める妻(世帯主の配偶者(女)の収入)の収入割合は上昇傾向にあり、妻の収入貢献度が高まってきている。次に、消費構造の変化をモノ(財)・サービス区分でみていくと、モノからサービスへのシフトが進んできていることがわかる。経済のソフト化・サービス化、ライフスタイルの多様化、女性の社会進出に伴う機会費用の上昇、家事労働の外部化、インターネットや携帯電話などIT化の進展、高齢化などが背景にある。家計消費においては、変貌する家族がもたらす影響も顕著にみられるようになった。単身世帯の増加や家族規模(世帯人員の減少)の縮小により、家庭内生産において「規模の経済」が働きにくくなり、食の外部化・家事労働の外部化を進行させた。また、消費支出を支出弾力性によって基礎的支出と選択的支出に区分すると、選択的支出が拡大してきて、最近ではほぼ半々の割合になっている。家計消費において基礎的支出から選択的支出に重点が移ってくることは、消費水準が向上し、消費が多様化・高級化してきていることを示している。それにより、消費の費目間での代替・補完関係も複雑化してきた。長期的にみると、全体的には暮らしが豊かになってきているが、その一方で世帯間の格差も拡大している。固定的な支出に圧迫されて食費すら削らなければならない状況にあって、収入が低いにもかかわらずエンゲル係数は小さくなるという「エンゲル法則の逆転現象」も観察されるようになってきた。リタイアした高齢無職世帯においては支出が収入(ほとんどが社会保障給付)を上回り、貯蓄の取り崩しによって赤字を補填し生活を維持している。とりわけ、格差は家計のストックの面で大きくなるため、二人以上の世帯の3分の2が貯蓄現在高の平均値を下回るという状況もある。貯蓄ゼロ世帯も増加している。最後に、これからの経済成長が厳しい見通しの中でも、豊かな暮らしを享受する手段としてシェアリング・エコノミー(共有経済)が注目されている。ストックを所有するのが無理でもフローでなら手に入れることができるという選択肢が広がっていくかもしれない。家計費分析から見える暮らし神戸女子大学 家政学部 ガンガ伸子