ブックタイトル神戸女子大学家政学部紀要 第50巻

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神戸女子大学家政学部紀要 第50巻

- 55 -食べることは生きることである。管理栄養士は食べることに関わる。胎児から高齢者までの各世代のライフステージにあって、あらゆる健康状態(健康づくり・キュアからケアまで)の、人びとの栄養・食についての自立をサポートする重要な役割を担う。すなわち、人々の人生に寄り添い、高度な知識を有する専門職として支援し続けていくことになる。食事療法が治療の基本といわれる糖尿病は、患者数が316万6,000人(2016年患者調査)となり、前回調査より46万6,000人増えて過去最高となっている。糖尿病治療では自己管理が不可欠であるが、その大半を占める2型糖尿病患者の多くは、自覚症状がないため、糖尿病治療への意識付けを行うことが困難である。そのため、糖尿病が早期に発見されて一度医療機関を受診したとしても、その後通院を中断し、重症の合併症が出現してから再度受診する場合が少なくない。「糖尿病受診中断対策包括ガイド」では、中断の理由は、治療の優先度の理解(忙しいから、など)疾患への認識(体調がよいから、など)の不足が挙げられている。そして中断への対策は、初診時に継続受診が必要なことを伝えることであり、栄養指導、療養指導などは受診中断の減少に有効であると示されている。適切な糖尿病治療が行われるには、糖尿病という病気に対する科学的アプローチだけでなく、一人ひとりの生きた人間、異なる考えや生活を持った人を対象としているというパラダイムを取り込む必要があるといわれている。患者と医療者のあいだで、十分な説明、十分な納得、および十分さを保証する情報交換が必要であり、その根本に信頼関係が必須である。医療の現場では、患者さんのいろいろな心が表現される。管理栄養士はそれを受け止め、聞き続けるという行為を丹念に継続する必要がある。病気を持った人がどう考えているか。病気ではなくて、人間というものを相手にしなければならない。臨床心理学者の河合隼雄博士は、『あなたと一緒に歩む、私はあなたの役に立ちたい。そのことによって、患者さんのこころに治癒力が芽生え、諦めが希望に変わる。』と述べられている。まさに、管理栄養士は患者さんと共に歩み、支え続けていく者であり、そしてそのためには高度な専門的な知識を必要とするものである。そして今、医療などの現場では、より高度な専門職としての管理栄養士が求められている。この大学から一人でも多くの優秀な管理栄養士が育っていくことを願う。患者さんと共に歩む管理栄養士を目指して神戸女子大学 家政学部 榊原美津枝