ブックタイトル神戸女子大学家政学部紀要 第50巻

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神戸女子大学家政学部紀要 第50巻

- 70 -陥り、後染めきものが大流行したが、銘仙の原料である絹紡糸の価格はほぼ一定で、銘仙価格は割高になったこと。さらに絹紡糸よりも価格の安い人絹を用いた後染めきものも出回ったこと。○ 京物の模倣による銘仙の画一化:銘仙が時代の流行を追い過ぎた結果、各産地の個性が無くなり消費者から飽きられるようになったこと。○ 品質の低下:物価の低落、百貨店等の価格競争の材料に利用され、粗悪品が多産されるようになり、中でも人絹糸を使用した銘仙は実用性に欠けるもの多かったこと。3 昭和12年からの銘仙生産量増加の背景○ 経済・社会情勢:昭和16年太平洋戦争に向けて二・二六事件、日中戦争と戦争色が濃くなり、国家総動員法公布、国民精神作興週間開始へと国民を戦争に協力させる流れがあった。銘仙が生産量を増加させた背景には、このような状況下における特殊条件である以下の事柄により需要が喚起されたと考えられる。○ 先染めきものの流行:時局の影響で、服飾界は色柄本位の後染め物から実用的な先染めの織物を求めるようになったこと。○ 戦争の銘仙への影響:戦時下で、銘仙が本来備えていた実用性を発揮できるようになり、また、色柄、地風に時代思潮を敏感に反映し、当時の嗜好に合うものを供給したこと。○ 社会運動、国策による銘仙着用の勧め:学校や婦人会、国策によって銘仙着用が勧められたこと。【まとめ】低迷する今日の着物業界の在り方の一助とするために、戦前の不況下における銘仙大流行の背景を3期に分けて探った。その結果、以下のことが明らかになった。昭和元年~5年の生産量上昇期では、①マスメディアによる合理的な家計運営の勧め②染織の新技術の開発により需要が喚起されたこと。5年~11年の減少期では①後染めきものの流行②京物の模倣による銘仙の画一化③品質が低下したこと。昭和12年からの上昇期では、①先染めきものの流行②社会運動、国策による銘仙着用の勧めで、需要が喚起されたこと。【参考・引用文献】1) 山内雄希:絹の大衆化と昭和モダン流行商品「銘仙」の誕生, 2012-072) 主婦之友:「伊勢崎銘仙に就て 伊勢崎織物同業組合 組長 下城雄索」, 1927-103) 伊勢崎織物協同組合: 『伊勢崎織物史』, 財団法人伊勢崎銘仙会館,群馬, 1966-10-01, グラフ4) 西村益: 『実用 織物の研究 第一部』, 日本織物研究会, 19505) 村上文芽: 『近代友禅史』, 友禅協会, 19276) 老川慶喜ら『: 日本経済史-太閤検地から戦後復興まで-』, 大坪嘉春, 20027) 中川達二: 『グラフィックカラー昭和史 第1巻 大正から昭和へ』, 研秀出版株式会社, 19778) 中川達二: 『グラフィックカラー昭和史昭和史 第10巻 風俗と世相』, 研秀出版株式会社, 東京, 19779) 甲賀忠一十制作部委員会:『明治・大正・昭和・平成 物価の文化史辞典』, 株式会社展望社, 東京, 2008-07-2810) 東京朝日新聞:「田舎娘のふだん着に絹づくめ 今年も夢見る絹織業者」, 1931-02-1111) 東京朝日新聞:「どか落ち相場に百貨店秋と冬物の煩悶」, 1930-08-0112) 婦女界:「呉服常識 緊縮時代には銘仙を着ませう」, 1929-1013) 伊勢崎織物協同組合: 『伊勢崎織物史』, 財団法人伊勢崎銘仙会館, 48 1966-10-0114) 伊勢崎織物協同組合: 『伊勢崎織物史』, 財団法人伊勢崎銘仙会館, 57-58 1966-10-0115) 東京朝日新聞:「木綿以上に歓迎される銘仙」, 1929-09-21