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2011年9月22日
史学科 梶木

武庫離宮庭園の「傘型あずまや」復元事業の完成を前にして

神戸市立須磨離宮公園で進められてきた武庫離宮庭園の「傘型あずまや」(通称、傘亭)復元事業は、来る10月上旬の完成にむけて工事が進められています。2011年9月9日・金曜日には、屋根内部が組み上がり、その製作過程の説明会が実施されました*


復元された屋根の上部

工事を指導された職藝学院(富山市)の上野 幸夫先生によると、今回忠実に復元された屋根は二重構造になっており、上部は緩やかな曲線をもつ野隅木や中心柱を貫通した腕木などからなり、これらの部材が北山杉の磨き丸太で造られた化粧垂木や薩摩葭を用いて作られた下部の天井を吊り下げる構造になっているということです。


北山杉の化粧垂木の意匠が美しい

9月16日・金曜日には、「むくり」とよばれる曲線をもつ竹穂葺きの屋根と「軽やかな」意匠をもつ天井からなる建物全体が姿をあらわしました。この竹穂の制作には多くの市民とともに、神女大の学生も参加しました。穂先を下に向ける「逆葺き」で葺かれた屋根は、とても素朴な仕上がりとなっています。その姿は、銅板瓦の屋根をもった「御二階屋」とは対象的で、まさに「あずまや」の名にふさわしいものです。


屋根の竹穂の調整が続けられていました

さて神女大は須磨離宮公園とのCP連携事業としてこの事業の開始当初から関わり、筆者は武庫離宮建設に関わる諸資料の調査と分析に取り組みました。明治末期から大正初期の武庫離宮建設資料は、宮内省内匠寮で整理され、宮内庁書陵部に引き継がれています。この近代公文書群に含まれた「傘型あずまや」の建築仕様書控えの分析が、今回の忠実な復元を可能にしました**。さらに、この調査中の2008年には地元に『武庫離宮誌』***と称される離宮の建築記録が残されていたことがわかり、早速その内容を検討する機会も得ました。


屋根に葺く竹穂作りには本学の学生も参加しました(神戸市立須磨離宮公園提供)

今回の復元事業は、市民の主体的活動を契機に始められたものです。そしてこの復元された文化遺産が、武庫離宮という近代の歴史が生んだ建造物群の一部として建てられたものであることも忘れてはなりません。これらの意味を踏まえて、大学と公園が互いの特質をどのように活用して、創造性豊かな連携事業を継続してゆくかを考える必要があります。

武庫離宮傘型あずまやの復元完成記念式典が行われました


* 9月9日の説明会についてはこちら
http://suma-rikyu.seesaa.net/article/225172917.htmlリンク先は新しいウィンドウで開きます

** 宮内庁書陵部で実施した「武庫離宮新築工事録」などの原本調査には、神女大教育研究部の助成を得ました。その成果の一部は、『神女大史学』第25号(2008年11月)に掲載しました。

*** 『武庫離宮誌』についてはこちら
http://www.city.kobe.lg.jp/information/press/2010/02/img/2010020311001-2.pdfリンク先は新しいウィンドウで開きます

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