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能楽資料展

神戸女子大学第二十七回コスモス祭参加
能楽資料室開室記念「能楽資料展」出品目録

*展示された資料の中には個人蔵も含まれております。個人蔵の物についてはセンターでは資料についてのお問い合わせ等にお答えできないこともあります。ご了承下さい。

平成七年十月二十八・二十九日
於 図書館四階

謡本

謡本:写本
1)堀池宗叱本
四十七冊。九十四曲。折本仕立て。両面書写。紺表紙に金銀泥で曲に因んだ景物や人物を描く。題箋は、金泥草花絵入朱題箋と朱無地題箋。前者は近衛龍山筆(慶長初年か)、後者は後奈良院皇子曼殊院覚恕親王筆と伝える。堀池宗叱は宗活の父。手猿楽者で茶道も堪能であった。
曲名「百万・桧垣、芦刈・墨田川、朝顔・三輪、安宅・鉢木、采女・松風村雨、小塩・白髭、柏崎・景清、兼平・自然居士、皇帝・張良、小袖曽我・芭蕉、西行桜・鵺、桜川・七騎落、志賀・葵上、関寺小町・班女、殺生石・江口、千手重衡・天鼓、卒都婆小町・田村、当麻・短冊忠度、丹後物狂・鳥追、綱・蟻通、藤永・放下僧、東岸居士・和布刈、道成寺・浮舟、錦木・知長、軒端梅・玉井、白楽天・野宮、浜川・東方朔、常陸帯・鵜羽、氷室・道明寺、富士太鼓・鸚鵡小町、二人靜・夕顔、舟弁慶・土車、放生川・龍田、仏原・篭太鼓、道盛・箙の梅、松浦・半蔀夕顔、梅枝・咸陽宮、盛久・遊屋、山姥・海士、遊行柳・小督、楊貴妃・井筒、夜討曽我・清重、養老・弓八幡、賀茂・敦盛、胡蝶・花月、経政・通小町、定家・高砂」。
2)上掛り謡本
二十二冊(零本含む)。慶長頃の写本か。紺表紙に曲ごとに異なる金銀泥表紙画。中央上の朱題箋に曲名墨書。綴葉装。本文六行。
曲名「安達か原、張良、三輪、野の宮、みちもり、誓願寺、志賀、天鼓、通小町、白楽天、花月、梅かえ、卒都婆小町、頼まさ、遊屋、さねもり、鈴木、関寺小町、芦刈、朝長、盛久」。なお、表紙のみ残る一葉の曲名は未勘。
3)上掛り二番綴謡本
中本二十四冊。綴葉装。紺表紙と白表紙。絵入色替題箋。室町末期頃節付。謡本箪笥入。
曲名「高砂・龍田、浮舟・仏原、通盛・朝長、関寺小町・桧垣、熊谷・松風、天鼓・景清、矢立鴨・源太夫、邯鄲・猩々、正存・木曽願書、元服曽我・夜討曽我、三井寺・桜川、鉢木・放下僧、生捕鈴木・藤戸、道成寺・黒塚、阿達・摂待、短冊忠則・俊成忠則、項羽・船橋、春栄・小督、弓八幡・玉井、鸚鵡小町・卒都婆小町、実盛・田村、野々宮・定家、清経・頼政、百萬・角田川、咸陽宮・融、井筒・夕顔、芭蕉・江口、小塩・遊行柳、木賊・丹後物狂、花月・唐船、松山鏡・野守、当麻・三輪、葵上・山姥、盛久・芦刈、八島・兼平、自然居士・東岸居士、梅枝・富士太鼓、白髭・難波、東北・千手、班女・玉葛、鞍馬天狗・善界、善知鳥・女郎花」
4)下掛り五番綴謡本
本学図書館蔵。十八冊。袋綴。浅黄表紙。色替題箋。五番綴。江戸初期頃写。
曲名「竹生嶋・弓八幡・鵜羽・難波・養老、清経・兼平・忠度・田村・経政、敦盛・八嶋・実盛・朝長・源三位、松風・井筒・楊貴妃・遊屋・定家、夕顔・吉野静・二人静・源氏供養・野宮、千手・采女・江口・東北・芭蕉、羽衣・遊行柳・西行桜・杜若・誓願寺、藤永・芦刈・盛久・春栄・小督、安宅・鉢木・七騎落・元服曽我・小袖曽我、柏崎・角田河・桜河・三井寺・百萬、藤太鼓・篭太鼓・天鼓・花月・自然居士、三輪・龍田・小塩・浮舟・玉葛、藤戸・女郎花・善知鳥・錦木・舟橋、関寺小町・卒都婆小町・通小町・鸚鵡小町・班女、海士・融・春日龍神・当麻・蟻通、紅葉狩・羅生門・熊坂・橋弁慶・舟弁慶、咸陽宮・邯鄲・張良・鐘馗・猩々、黒塚・野守・道成寺・葵上・是害」
5)謡本切「竹雪」
古筆切の一種。謡本の切は珍しいか。
6)平松家旧蔵福王流番外謡曲八百十番本
四百番(二冊欠)、五百番揃、六百番(二冊欠)、七百番(一冊欠)、八百番(一冊欠)。四百番、五百番は五番綴。六百番以降は十番綴。四百番は山藍摺蜀江錦艶出表紙。五百番本は青白椽布目表紙。六百番、七百番は紺色流水寿文空押表紙。八百番本は黄椽布目表紙。謡本の他に「板外外題揃 八百十番」紺表紙一冊。曲名省略(『未刊謡曲集』所収吉田本解題参照)。
「当家伝り之写本有之トいへ共 天明八戊申年京宇土火災之節 散乱拠之 今般改令書写者也 文政十一年子九月 平松善右衛門 行年六十五歳 信尚(花押)」
※参考出品 世阿弥自筆能本(複製)

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謡本:版本
7)光悦謡本「皇帝」
本学図書館蔵。一冊。綴葉装。上製本。香色大蔦雲母模様表紙。江戸初期に刊行された観世流主要謡本の一。書体、料紙、意匠のすべてにわたる豪華本として珍重されてきた。
8)光悦謡本「定家」
一冊。袋綴並製本。薄灰色唐草米字印襷文(甲)雲母模様表紙。
※参考出品 光悦謡本(複製)
※参考出品 元和卯月本(複製)
江戸初期に刊行された観世流主要謡本の一。元和六年卯月の観世太夫の奥書を持ち、この系統が以後の観世流謡本の主流となる。
9)七大夫仕舞付
万治元年林和泉掾刊。百番二十冊の内。仮綴。間拍子、囃子付、型付、作物、間狂言等をも記した特異な内容で、本文は擬車屋本系の下掛り謡本。
10)万治二年山本長兵衛刊頭注入謡本
二十冊(一冊欠)。紺表紙。辞解を頭注に収めた『七大夫仕舞付』同様の新形式謡本で、以後に例がない。本文八行。辞解は必ずしも『謡抄』の引写しではなく、出版した山本長兵衛(山長)の企画による新たな辞解が試みられたか。山長は、江戸時代を通して謡本を出版した本屋で、現在の桧書店に引き継がれている。
11)謡曲九十番
十九冊(二十冊の内、第一冊目欠)。寛文十年恵賢版。福王盛信手沢蔵印本。香色下段に花紋亀甲空押表紙。萌黄地金草花模様切箔散好題箋に曲名墨書。五番綴。初刷本。本文九行。十九冊の内、題箋付十二冊。『鴻山文庫本の研究』による分類内組Cの版の別装本。各巻末に服部宗碩の署名「流木軒盛信」の朱印あり。本文も朱筆にて章句語句の訂正挿入を施しており、福王家七代盛信の手沢本。
12)明和改正謡本
観世太夫元章による大改正謡本。内・外二百番、習十番(以上、紺色菊牡丹唐草模様表紙)、二百十番謡目録、九祝舞(以上紺色文様入七宝繋表紙)、独吟(九冊・紺色分銅繋ぎに宝尽くし表紙)のほか、副言巻もある。元章以後廃止されたが、その影響力は大きい。出品は後刷り訂正を施した山長版。
13)文化七年刊囃子謡仕舞謡 二種
一橋徳川家の私家版。全五冊。内一冊は仕舞謡。退紅色金砂子五雲模様布目表紙Aは橘文庫蔵。『鴻山文庫本の研究』に記す特製本とも異なる別装本。水浅黄表紙Bは並製本ともまた異なり、かなり多様な表装で作られたことが窺える。
14)版本番外謡曲
貞享三年林和泉掾刊三百番本、元禄二年林和泉掾刊四百番本、正徳六年林和泉掾刊五百番本。各々五番綴二十冊、計三百番。香色布目表紙。田藩(田安徳川家)文庫旧蔵本で、『版本番外謡曲集』の底本。
※参考出品 『版本番外謡曲集』 平成二年臨川書店刊。

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謡本:部分謡
15)王代記
一冊。紺表紙。刷題箋。戸川浜男旧蔵本。「残花書屋」の所蔵印。刊記「万治三年庚子六月下澣 新町通中長者町下ル町 谷口宗兵衛板」。歴代天皇の名を綴った便用謡。末尾に天皇系図を付す。孤本か。
16)便用謡
一冊。山藍摺表紙。題箋中央。美濃版。便用謡十五曲の集成。
刊記「此便用謡者因音曲節族為諳其事各考本実省繁摘要以備閑寂之一慰且釈家三番者依或之需加于最末耳 享保八壬癸卯歳孟夏 江戸本石三町目之横町岩付町 三浦久之丞庚妥述之 板本右同所有之」。
所収曲の内、「王代記」は後水尾院を当代とする古版をもとに書き加えており、「雖有古板次第相違改之并加近代」と注記する。また、「十四経」も「王代記」と同時代頃の板と思われる古版本「十四経脈論」(『謡本於裳佳介』第六十二図)に基づくらしい。他にも古板に基づく注記を持つものもあり、それらを集めて自家出版したものと思われる。三浦庚妥は他に『音曲玉淵集』(伝書その他2に出品)の著述で知られており、この『便用謡』も、古版本の多くが仮名書きで左に漢字を付す体裁であったのを、漢字本文に改め、左に読みを付し、発音に関する頭注を加える等の処置を施している。
※参考出品 橘文庫蔵『謡本於裳佳介』(三上進編昭和八年刊)
17)乱曲扇拍子
横本一冊。紺表紙。刊記はなく、序に「初春吉祥日 轉長六序」、跋に「弥生吉日」と記すのみであるが、「宝永世津歳丁亥初春吉祥日 轉長六序」と年記のある本の存在が知られている。
18)乱曲颯々諷箱
横本一冊。浅黄布目表紙。明治の後刷本。なお、17・18と同種のものに『乱曲組盃』がある。
※参考出品 座興謡作替文句
上下二冊。緑色浮線綾空押表紙。上巻は『乱曲颯々諷箱』、下巻は『乱曲扇拍子』によった明治三十五年刊の新刻本。
19)謡行烈座敷狂言
横本一冊。紺色布目表紙。刊記「南久太郎町心斎橋筋 安井弥兵衛寛保三癸亥六月吉日」。序「寛保花咲春 浪花散人伝重堂 琴滝」。「瀧」の陰刻。
※参考出品 やつし謡各種
20)随一小謡絵抄
一冊。紺色流水空押表紙。主題箋と別に緑色の項目見出題箋を貼る。文化二年版 天保十年再刻。田宮仲宣編、多賀如圭画。表紙裏表紙見返しを除き七十五丁。柱には丁数を刷らず、喉に「随一□(丁数が入る)」「訓□」「獨□」を刷り、複数の改題本の存在を知ることができる。『小諷訓蒙図彙』(四十六丁)は、こうした改題本の一つ。頭書に種々の啓蒙記事を加えて刊行され、庶民教育用に機能した。江戸後期の小謡本量産の実態が窺えよう。
※参考出品 小謡本各種

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伝書その他

※参考出品 世阿弥伝書複製(風姿花伝・花修・至花道・花鏡・申楽談儀)
※参考出品 世阿弥十六部集 二種
※参考出品 禅竹集
1)八帖本花伝書 三種
寛文五年刊。室町後期に成立した能伝書の集成。はやく古活字版も刊行された。世阿弥の「風姿花伝」とは別。縹色表紙の図書館蔵Aは八冊本を二冊にした改装本。紺表紙Bは初版に近い大型本(但し改装)。AとBの刊記は「寛文五年乙巳九月吉日 平野屋佐兵衛開板」。桑色表紙Cは年記のみで「平野屋佐兵衛開板」を削る。改装表紙に「申楽花傳」と墨書。)
2)音曲玉渕集 三種
縹色表紙Aは森修文庫蔵。五冊。刊記「享保十二丁未年孟夏 今村義福蔵板」。縹色表紙Bは「宝暦十二壬午歳六月 今村義福蔵板 東都書林 本石町三町目前川権兵衛 本銀町通二町目近江屋藤兵衛求板」。香色布目表紙Cは本学図書館蔵。明治桧版。
3)奈良土産 二種
柴色表紙Aは森修文庫蔵。上中下三冊。刊記「貞享四丁卯年九月吉日 押小路通麸屋町西へ入丁 上野屋市郎兵衛開板」。白群色檀紙表紙Bは明治三十五年六月刊桧版。「貞享四丁卯年九月吉日」の刊記を残す。
4)奈良土産返答 二種
Aは森修文庫蔵。上中下三冊。紺表紙。刊記なし。Bは明治三十六年八月刊桧版
5)舞正語磨 二種
Aは森修文庫蔵。三冊。紺色雷文繋地空押表紙(改装)。刊記「秋扇翁 万治元年戊戌十月六日撰之畢」。万治元年北十太夫の京都勧進能についての批評。その反論としての『猿轡』がある。白色布目地に上段横刷毛目下段落松葉松かさ散らし表紙Bは大正七年に珍書保存会より刊行された複製本二冊。
6)謡之秘書
森修文庫蔵。一冊。黄土色表紙(改装)。刊記「慶安五年壬辰九月吉日松会市郎兵衛開板」の内、「松会市郎」の部分は入れ木。改装表紙のため、題箋を失うが、他本によれば元題箋は「謡の秘書」。以後、謡伝書が各種刊行された。
7)当流謡指南抄 二種
紺表紙Aは森修文庫蔵。一冊。刊記「元禄九丙子歳孟春吉日 川勝五郎右衛門」。主題箋と別に項目見出題箋を付す。赤白椽色丸に浮線綾空押表紙Bは明治三十一年桧版。外題「謡曲指南抄」。一冊
8)謡秘伝集
森修文庫蔵。一冊。紺表紙。刊記「干時元禄十丁丑年五月吉辰 大阪梶木町 伊丹屋太郎右衛門開板」。外題「当流謡秘伝抄」
9)当流御手鑑観世謡指南抄
一冊。紺表紙。刊記「正徳二壬辰歳 正月吉日 五条高倉西江入町 川勝五郎右衛門 江戸日本橋南一町目 舛屋五郎右衛門」。外題「当流謡大成」。主題箋と別に項目見出題箋を付す。
10)謡鏡
森修文庫蔵。一冊。浅黄紗綾形空押表紙。上巻のみの零本。孤本。横本。三十三丁。刊記欠。音曲伝書。
11)舞楽蕊葉大全 二種
Aは森修文庫蔵。七冊。紺表紙。刊記「元禄十二歳卯五月吉旦 大坂本町壱丁目 書林萬屋彦太郎板」。内題「舞楽拾遺大成」。元禄四年刊『鼓笛宝鑑』の改題増補本。巻一は囃子手付。巻二は能之図式。巻三以降は鼓笛宝鑑。紺表紙二冊本のBは後刷り。刊記は「元禄十二歳卯五月吉旦 大坂南本町二丁目 書林萬屋仁兵衛刊板」。
12)舞楽大全
二十二冊。紺表紙。刊記「干時貞享四年丁卯七月吉日 江戸通石町拾軒棚 山田屋伝右衛門 江戸大伝馬町弐町目 木下甚右衛門」。
13)謡曲画誌 二種
Aは森修文庫蔵。十冊。紺表紙。「享保十七年壬子之春 中村平五三近子記」と「享保壬子之春 後素軒橘有税子」の二種の序文を載せる。刊記「享保二十乙卯年正月吉日 今井喜兵衛 額田正三郎 井上忠兵衛 二鳩堂中野宗左衛門 今井七郎兵衛 梅村三郎兵衛 田中庄兵衛」。画工 大阪 橘守國 彫刻 大阪 藤村全右衛門 同 村上源右衛門。浅黄布目表紙のBの刊記は「享保二十乙卯年正月吉日 毛利田庄太郎」。巻一と四に謡訓蒙図会を取合せた合冊本。中村三近子は往来手本韻書字書類に多くの著作を残す。橘守国は『画本通宝志』『画本故事談』『画本写宝袋』等で知られる浮世絵師。
14)謡訓蒙図会 二種
謡曲画誌の改題本。白群表紙Aは森修文庫蔵。全十冊を二冊にした合冊本。刊記「文政六年癸未正月求版。浪華岡田群玉堂 心斎橋通博労町南入 河内屋茂兵衛」。浅黄翁面・面箱空押表紙Bは橘文庫蔵。巻三と七のみの端本。享和二年版か。
15)能辨惑大全
森修文庫蔵。五冊。山藍摺布目表紙。刊記「撰述 高田平七 元文五年庚申冬」。序「元文五年歳次庚申冬至日 摂陽南郭山人 橘泉堂 学而子含毫金華亭」。百十二番の装束付、并に型付。
16)能訓蒙図彙 二種
Aは貞享四年刊。全四冊の内、巻四を欠く。取り合せ本ながら、初刷に近い。原題箋を残す。紺表紙。B(改装)はその後印本。
17)改正能訓蒙図彙 三種
Aは森修文庫蔵。一冊。紺色鳳凰芭蕉空押表紙。貞享四年刊行の能訓蒙図彙の改正版。刊記「宝暦十歳辰三月 大坂 心斎橋筋南四町目 鳥飼市兵衛 京 新町通下長者町上ル町 谷口七左衛門板」。Bは一部貼紙訂正を施した改訂本。宝暦十二年に改訂版が刊行されるが、度々、入れ木や貼紙等で新情報が加えられ、版を重ねている。Cはその一部改訂本。刊記「宝暦十歳 同十二午歳新改正 大坂 心斎橋筋南四町目 鳥飼市兵衛 京 新町通下長者町上ル町 谷口七左衛門板」。BCはAと同表紙模様。
18)謡忌詞 二種
Aは森修文庫蔵。一冊。江戸中期写。柴色布表紙。Bは五冊。江戸中期写。黄枯茶布表紙。「延宝四年三月忌言斎一器子述 寛政十一年十月喜多古能撰」の序。
19)謡抄 二種
豊臣秀次の命によって編まれた、最古の謡曲注釈書。古活字本各種あり。
Aは寛永初年刊本の後刷。正保頃か。二十冊。
Bは同版の江戸時代中期刊の一種。こげ茶表紙。
Cは大型整版本の一種。寛文頃か。利休鼠色表紙。
※参考出品 諷歌鈔(複製)
龍谷大学蔵本。謡鈔編集過程の状況を示す。
20)謡曲拾葉抄 二種
二十冊。Aは香色に朱の格子霞表紙。刊記「明和九年壬辰首夏 京都 堀河通高辻上ル町 銭屋七良兵衛 京都 醒井通松原上ル町 鍵屋源兵衛 大坂 心斎橋南四丁目 吉文字屋市兵衛」。謡鈔にかわって最も流布した謡曲の注釈書。犬井貞恕の注に忍鎧が大幅増補した。寛保元年序。薄茶色布目表紙Bは明治版。
※参考出品 明治以降出版の活字本『謡曲拾葉抄』各種
21)法音抄 二種
天台宗の僧侶、洛東向旭山正立寺恵空による謡曲の私的講釈書。二十二番。恵空は寛永二年生れ、元禄四年没。縹色表紙Aは五冊本の第二・三巻を各々二冊に分けた八冊本。刊記「正徳四甲午年仲夏良辰 洛陽書林 浅見吉兵衛」。冒頭内題に続く首記に「東叡山末院」の五文字を冠する香川図書館神原文庫所蔵本が貞享元年前後の初印本、正徳本はその改編後刷本と考えられており、出品の内、端本である茶表紙B一冊は、刊記を記す最終丁を欠いているものの、貞享版と思しい。
※参考出品 21の複製本
22)謡曲参考鈔
二十冊。別録一冊。縹色表紙。延岡内藤家臣佐久間信満(露傘)による謡曲百番の注釈書。立圃の注(現存せず)を「圃注云」の形で引用し、自注を「傘考」として付す。天明六年清水芫爾序。高嶋貞勝跋。
23)山姥諷抄
浅黄布目表紙。元乾坤二冊を一冊に合冊した改装本。寺島澗龍子著。「寛政壬子春王三月雲山黒池龍道」の序。刊記無し。尾張金城北雲山塾蔵版。序四丁、上巻三十七丁、下巻三十九丁。本文八行。山姥一曲の注。
※参考出品 諷増抄(複製)
加藤盤斎の謡講釈。寛文元年自序。十五番十二冊。謡抄をふまえて増抄という。
※参考出品 謡抄補遺(岩瀬文庫蔵本 写真)
※参考出品 宝生流謡俚諺察形子(京大蔵自筆本 写真)
※参考出品 謡言粗志(金沢市立図書館蔵本 写真)
24)謡字引 四種
一冊。「宝暦己卯秋九月 木強思明撰」の序。Aは森修文庫蔵。鼠色布目表紙。刊記「宝暦十庚辰初夏日 阿波座衽町 浪華書林 寺田善助梓」。Bは巻末に広告を附した後刷。Cは鼠色表紙。刊記「寛政三辛亥年初春吉日 江戸日本橋三町目 前川六左衛門 大阪南久宝町心斎橋筋 高橋平助梓」。Dは嘉永七年再刻。Eは鼠色表紙。刊記「心斎橋通南久宝寺町 大阪書林 塩屋平助」。収載曲は、江戸期を通じて最も流布した内組Fの組合せの内、第六冊第一曲が鵜羽から竹生島し変更された後組に対応する。貞享三年九月刊の謡本以後、山長で多く採用された曲の組合せである。
25)外謳字引 二種
Aは森修文庫蔵。一冊。鼠色表紙。刊記「明和七庚寅年閏六月 阿波座袂町 浪華書坊 寺田善助」。Bは宝暦十年寺田善助刊本。内組Fに対応する、外組eとfを合わせた百三十番の字引きに、乱曲久世舞七十六曲の字引きを付す。
26)改正観世流謡字引 二種
一冊。枕本。桑色布目表紙Aは明治十九年刊。香色群翔千鳥空押表紙Bは明治二十六年刊。著作者として林喜右衛門の名を載せる。林喜右衛門が編集者になっているものには、他に明治十八年桧常之介刊『明治太平小謡本万戸聲』などがある。
27)謡語須知
上下二冊。海松色流水に寿紋蝋箋表紙。刊記「享和三年癸亥冬新鐫 安芸 芝野蔭丸  大阪 蘭馨亭蔵」。琴屋主人序。封面に「酔芭屋主人譯」。
※参考出品 謡曲辞海
上下二冊。香色布目表紙。明治三十二年江島伊兵衛刊。謡語須知の改題本。
28)八拍子  四種
Aは森修文庫蔵。上中下三冊。藍鉄色布目表紙。刊記「文化二年丑正月再刻 村上勘兵衛 菊屋喜兵衛 山本長兵衛 山川五兵衛 山城屋佐兵衛」。Bは橘文庫蔵。中巻を欠く上下二冊。浅黄色布目浮線綾空押表紙。刊記「安永八己亥季孟春 平安山常綱 文化二年丑正月再刻 村上勘兵衛 菊屋喜兵衛 山本長兵衛 小川五兵衛 堺屋嘉七」。Cは上中下三冊。浅黄色布目表紙。刊記「文化二年丑正月再刻 山本長兵衛」。Dは上中下三冊。錆鼠色布目表紙。刊記「安永八己亥季孟春 平安山常綱 文化二年丑正月 再刻明治三十三年江島伊兵衛刊」。
29 拍子筌
一冊。浅黄色龍紋空押表紙。刊記「明和二酉年秋八月 北久宝寺町心斎橋 柏原屋佐兵衛 浪花書坊 阿波座衽町 奈良屋善助」。
30)改正拍子筌 四種
各一冊。Aは森修文庫蔵。浅黄浮線綾空押表紙。刊記なし。香色蜀江錦表紙B、砥粉色蜀江錦表紙C、縹色布目表紙Dは明治桧版三種。
31)謡道歌 二種
Aは香色地に砥粉色花模様表紙。見返しは金銀箔散らし。一巻。奥書「右之一巻日比御執心故古人書置候写進上申候 尤他見被成間敷候者也 服部宗巴」。服部宗巴は福王盛親。延宝元年、六十五才没。白地に唐草模様金蘭表紙Bは福王流平松家本。一巻。奥書なし。
32)謳秘事歌袋
一冊。青白椽布目表紙。金箔散らし題箋。奥書「寛政二かのへ戊季冬 小川庄右衛門門人速水円斎弟子 青地茂左衛門 周盈(花押)」。七五九首の謡道歌。青地本和泉流狂言六義が知られているが、これはそのハズレ本。

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狂言

1)狂言六義
全二十冊の内、巻十六〜巻十九の四冊を欠く。香色に薄茶の格子刷毛目表紙。明治写本。奥書なし。斑山文庫旧蔵、吉田幸一蔵本(古典文庫に複製あり)。明治四十三年七月吉見明影写に同じ。
※参考出品 古典文庫 和泉流狂言集 二十冊(複製)
2)狂言記
五冊。紺表紙。刊記「寛文五乙巳年三月日 板木源左衛門開板」。『室町ごころ』に翻刻あり。
3)狂言記外 巻五
半紙判一冊。柴色表紙。刊記「元禄十三庚辰五月吉日 京寺町通二条下ル町 野田弥兵衛 大坂北御堂前 毛利田庄太郎 江戸石町拾軒店 野田重兵衛」。
4)絵入狂言記 正編 続編 拾遺
横本各合五冊。袋付。嘉永元年刊。青藜館積玉圃蔵板。表紙は色替わりで、正編は縹色、続編は砥粉色、拾遺は山藍摺色に、各々流水に紅葉散らし空押。香色武田菱空押表紙明治版もあり。
5)間仕舞付 二種
浅黄表紙Aは全五冊の内、第一冊を欠くが、「貞享三丙寅年九月良辰 洛陽書林 田中庄兵衛 寿軒」(相版一軒の名を削る)の刊記あり。横本。山藍摺表紙Bは巻五の「京都御能役者居宅并指南者」十一丁分とそれに続く刊記部分なし。「能礼式作法記」を巻一に置く(Aは巻五にあり)。
6)大蔵弥右衛門風流等作物書上
一冊。江戸中期写。表紙は後装。元表紙に「風流 狂言 替間 造物急ニ出来兼候分 大蔵弥右衛門」と記す。墨付十丁。
7)照葉狂言各種

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絵画

1)錦絵「千代田之御能 御謡初」 三枚一組
明治三十年四月福田初次郎発行  周延画
2)錦絵「千代田の大奥 御能楽屋」 三枚一組
3)錦絵「温故東能図 旧幕府御大礼之節 町入御能拝見之図」 三枚一組
由延画
4)錦絵「青山仮皇居御能図」 三枚一組
明治十一年七月五日 綱島亀吉版 橋本直義画。梅若実「正尊」の舞台。
5)錦絵「東山殿猿楽興行図」
玉蘭斎貞秀筆 柳下亭種員の文あり。
6)錦絵「舞楽翁古画之図」 三枚一組
7)刷物「風流能狂言」 一枚
絵入番組 京大阪役者連名入
8)刷物「南都興福寺南大門」 一枚
南都北魚屋西町 いせや庄六版
9)刷物「謡名所競」 一枚
謡曲曲名番付
10)刷物「今様能狂言」 一枚
絵入。役者付を付す。
11)刷物「住吉社興行 御神事御能絵番組」 一枚
12)刷物「伊勢大神宮大御田楽之図」 一枚
13)刷物「歳旦 狂言花折図」 一枚
14)能画図式
一冊。白色に茶縦線表紙。河鍋暁斎筆。刊記「明治二十年八月 下谷区御徒町壱丁目三番地 吉田金兵衛」。

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軸物

15)釈阿画讃 空華老人忍鎧筆
忍鎧は『謡曲拾葉抄』の著者。
16)鵜羽図
17)高砂図 芝山持豊賛 錦小路頼尚画。
18)相生松図 福王雪岑画 宝暦四年観世元章試筆四海波
雪岑は福王流九世茂右衛門盛勝(天明五没)。絵をよくし、彩色画が多く残るが、墨絵は珍しい。
19)一行書 観世元章筆
20)白鳥翁故事之写 観世清宣筆

解題執筆 大谷節子

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